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椎弓形成術について深く理解してから治療に挑みたいと考えているのであれば、これまでどのような歴史を経ってきた治療法なのかおさえておくことをおすすめします。
椎弓形成術の歴史について解説します。
椎弓形成術は、脊椎手術の一つです。1778年には、イギリスの外科医であるパーシヴァル・ポットが、結核性脊髄炎における膿瘍の排膿手術に成功しました。これが脊髄手術の始まりとされており、そのころから稀に行われてきた手術です。
ですが、本格的に脊髄の手術が行われるようになってきたのはそれよりも後の話です。19世紀に入り、消毒法が発見されてから広く普及してきました。
1887年になると、世界で初めて脊髄腫瘍の摘出術が報告されます。手術を成功させたのはイギリスの脳神経外科医で、1908年にはドイツの脳神経外科医によって世界で初めて椎間板ヘルニアの摘出手術が成功しました。
日本国内で椎弓形成術が発展してきたのは、20世紀後半に入ってからのことです。1960年代から1970年代にかけては、広範囲同時除圧式椎弓形成術が行われていました。ただ、欠点もあったことから、後に広まったのが服部法とも呼ばれる「山口大式頚椎椎弓形成術」です。
ですが、こちらも難しく、技術を習得する時間がかかることからそれほど広まりませんでした。
後に登場する「平林法」と「黒川法」が日本国内での椎弓形成術の発展に大きく貢献しています。
平林法は1978年に報告された術式で、正式名称は「片開き式頚部脊柱管拡大術」です。椎弓片開きの椎弓形成術で、手術時間が短く済むのが特徴といえます。
従来の手術法と比べると難易度が低いこともあり、大きく広まりました。ただし、硬膜外静脈叢から出血する問題があることから、慣れが必要とされています。
1982年に報告されたのが、黒川法で、正式名称は「棘突起縦割法頚椎脊柱管拡大術」といいます。片開きである平林法とは違い、椎弓両開きの椎弓形成術です。
他にもいくつかの術式があるのですが、現在もスタンダードに行われているのがこれら2つの方法です。
以前と比べて脊椎手術は非常に進化してきました。例えば、3Dプリンティングを活用した手術なども行われています。
近年の脊椎固定術で使われているのは、脊椎を安定させ、良好な位置に矯正する働きがある椎弓根スクリューです。椎弓根スクリューは適切な位置に埋入するからこそ効果があるものなのですが、この椎弓根スクリューを挿入するガイドを作る技術として、3Dプリンティング技術が活用されています。
患者さんそれぞれ身体の状態が異なるため、一人ひとりにとって適切な位置に埋入しなければなりません。術前CT画像を使って3Dプリンティング技術で作ったスクリュー挿入ガイドを活用することにより、患者さんに適した位置に椎弓根スクリューが埋入できるようになります。
低侵襲脊椎手術を大きく進化させる技術といえるでしょう。他にもさまざまな手術方法や器具類などの開発が行われており、傷口を小さくできるような新しい手術方法も登場しています。
今後、日本国内での椎弓形成術はさらに発展していくのではないでしょうか。
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新小文字病院 脊髄脊椎外科 治療センター |
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2023年手術実績:193件 (頚椎84件、胸・腰椎109件) |
2023年手術実績:186件span> (脊椎固定術、椎弓切除術含む) |
2023年手術実績:14件span> (頸椎) |
2023年手術実績:10件span> (椎弓形成術) |
2023年手術実績:8件 (頚椎) |
※選定条件:公式サイトで椎弓形成術の手術実績を公表しており、低侵襲手術が可能で、リハビリ病棟を開設している福岡県の医療機関をピックアップしました(2024年7月9日調査時点)。